視的生活 35

つまりネ、いまの状態、というよりも状況の中で一枚の名画を作るとかこの一枚で人助けを、なんていう素朴リアリズムというか素朴ヒューマニズムなんてのはあまりにも楽天的で、とにかくぼくなんてテメエの存在を見失うまいとしてアップアップしているわけで、そのことに、つまり自分に向けてピントを合わせるのが精いっぱいだよ。どうあれ人間の思惑など知ったこっちゃないってばかりに、世界はどんどんなだれこんでいっちゃってる。
(森山大道『写真よさようなら』1973刊、中平卓馬との対話)

_2003.12.29