著者・菊岡京子が夫・菊岡久利とともに鎌倉に転居したのは1950年。詩人であり、思想家であり、美に対する造詣が深いことで知られる菊岡久利の周囲には、川端康成をはじめ、高見順、武田麟太郎、吉野秀雄、鳥海青児、村松梢風など多くの作家、歌人、詩人、画家たちが訪れ、語り、酒食を楽しみました。そんな情景を鎌倉の自然や風物があたたかく包みました。
本書は、自然や子育てに想を得た若き日の随筆、故人となった人々を追憶する近年の随筆、そしていま心傾ける短歌を集めた初の著作集です。しっとりとした、しかし爽やかな谷の風のような心象スケッチが、半世紀を経ても変わらぬ鎌倉の魅力を伝えます。
著者は小町通りに和紙専門店「社頭」を営んでいます。開店以来30数年、一日も休んだことがないこの店もいまでは、鎌倉を彩るかけがえのない風景のひとつとなっています。

※まことに残念なことに、遺作となってしまいました。
こころからご冥福をお祈り申し上げます。

かまくら小町

¥2,000
初版第2刷(2002.6.5)